平成二十二年度 布教教化に関する告諭
曹洞宗管長  大道 晃仙

 今、私たちは、地球温暖化の問題をはじめ災害、戦争、差別、貧困、自殺などいのちをめぐる諸問題に直面しています。いずれも曹洞宗が掲げる三つのテーマ「人権の尊重、平和の確立、環境の保全」に深く関わるものです。
 瑩山さまは、「常(つね)に大慈大悲(だいずだいひ)に住(じゅう)して、坐禅無量(ざぜんむりょう)の功徳(くどく)、一切(いっさい)の衆生(しゅじょう)に回向(えこう)せよ」とお示しです。毎日、み仏とご先祖が見そなわすもとで、姿勢を調え、呼吸を調え、心を調えましょう。そのとき、生かし生かされ、強い絆(きずな)で結ばれている一人ひとりのいのちの尊さに気づき、慈悲心あふれる行いをめぐらす生き方ができるのです。
 お互いに相手を尊(とうと)び、相手の立場に立って悩み苦しみ、考え、行動し、共に生きる理想社会実現のため、まず私たちが率先(そっせん)して布施(ふせ)・愛語(あいご)・利行(りぎょう)・同事(どうじ)の行(ぎょう)を実践(じっせん)しましょう。
 道元さまは、「現在(げんざい)の身命(しんみょう)の存(ぞん)せらんあひだ、このんで愛語すべし」とお示しです。愛語は、人びとの幸せな生活と心の安寧を願い、慈心から発せられる言葉です。この愛語の行(ぎょう)には布施・利行・同事の行が十分に具わっていると説かれています。本年度もこの「愛語」を実践の柱とします。
 愛語は苦しいときも楽しいときも、常に相手のことを思い、人を生かし、人を仏道に導く菩薩行です。
 「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」のお唱えは愛語の根本です。
 南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)

 平成二十二年度布教教化方針

 曹洞宗の布教教化は、一仏両祖の生き方を慕い、自己自身にその み教えを実現することを誓い、多くの人々と共に生きることを目指します。それは常に社会の苦を己のこととして考え、社会の苦に寄り添う仏教者の生き方を願うものです。
  現代は自我の肥大と、人との絆を見失った結果、孤立を深め、いのちの尊さや人間関係の大切さを忘れかけています。このような社会であるからこそ、宗門として、また仏教者として「菩薩の実践行である四摂法(布施・愛語・利行・同事)」を実践してまいります。現代ほど寺院の使命や新たな役割が望まれている時代はないからです。
  また、亡き人々や先祖を慕う心、その発露である供養を、かけがえのない絆として大切にしてまいります。
  そして、教化施策の柱である「人権の尊重・平和の確立・環境の保全」の展開をすすめ、本年度も「愛語」の実践を通して、「み仏の絆」を深め、次のように布教教化方針を定めます。
1、 「南無釈迦牟尼仏」のお唱えの普及に努めます。
 私たちは、常に「南無釈迦牟尼仏」とお唱えし、仏の教えを灯火(ともしび)として、坐禅に親しみます。
2、 あらゆる差別の撤廃と人権啓発の活動に取り組みます。
 私たちは、仏教の慈悲の原意にたちかえり、社会の中で抑圧され排除されている全ての人々の苦しみ、悲しみを共有し、差別撤廃のために歩んでいきます。
3、 共に喜びを分かち合える平和な社会の実現を目指します。
 私たちは、過去のあやまちと戦争の惨禍を直視し、不戦を誓います。全世界の安心と平和な社会を実現するため、相互理解と協調による道を共に歩みます。
4、
大いなる自然に生かされていることを思い、「地球環境をまもる全曹洞宗の運動」(グリーン・プラン)を継続していきます。
 私たちは、自らが大自然とひとつであることを深く自覚し、未来の地球の姿に思いをいたし、身近なところから、環境に配慮した生活を実践していきます。
5、
人々の出会いの中で、相手を思いやる菩薩行を実践していきます。
 私たちは、他者の心の安らぎを自らの心の安らぎとして共に歩みます。苦難の中にいる人々に寄り添い、ボランティア活動など見返りを求めない積極的な菩薩行を、身近なところから始めます。
6、
寺院を地域社会の「絆を再生する場」に活かします。
 私たちは、地域社会に積極的にはたらきかけ、寺院を広く開放し、人びととの様ざまな縁を大切にし、信仰生活を柱とする絆をつくっていきます。


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